最後の花摘み
美しく端整な日本語のセンテンスを集めた1冊。
どこか滑稽で童話的な、あるいは不気味でものがなしく透き通った一行物語と、空想の上澄みを一滴一滴採集したアフォリズムを採録。
加えて、随想的な創作と詩的な思索による短文、断章を綴ったノートを再構成。
エピグラムあるいは箴言集の形で綴られたこれらに加筆修正を施し、文庫サイズにまとめました。
---------------------------------------【一行物語】毎月どこからともなく「絶対に開けないで下さい」と書かれた小包が届き、捨てることもできないので、倉庫に小包が山積みになっている。
雪の結晶が溶けるのを忘れて、夏に置き去りになっている。
行き先を告げてから、もう十五年間タクシーに乗りつづけているのだが、いまだに目的地に辿り着く気配がない。
【アフォリズム】消去法が貴女を消してゆく。
伝えられない想いばかりが彼女を焦燥させ、疲れた彼女は自分のために紅茶を淹れた。
カーテンの向こうから午後の光が射してくるとき、彼女を使い古したすべての文脈に彼女は服従しなかった。
【最後の花摘み】ルビをふることのできない感情ばかりが、生まれては消える。
横殴りの優しさが君の感情をあやして、願いは昨日の果てまであまねく降り注いだ。
僕は封をした幸福を君に届ける準備をしながら珈琲を飲み干すと、赤いリボンを丁寧にむすんで窓の外に広がる寒空を見上げた。
あなたが素敵であればあるほど、あなたの隣に居てはいけない。
残響 / ゆらぎ / ピアノ線 / 致死量――本文より抜粋
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