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紗袷を着て往く

祖母から孫へ、紗袷(しゃあわせ)の着物が託されたその年に、高齢者と若者は未知のウイルスの脅威に引き離される――。
北埼玉で暮らす着物好きの美乃里が、’不要不急’の着物を通じて、人とのつながりを紡いでゆく。
*** 数十年ぶりに桐箪笥から出された畳紙はすっかり黄変している。
紙面には「藤村呉服店」という店名と、「騎西町」から始まる住所が書かれていた。
合併によって現在の加須市となった祖母の出身地だ。
おそらく若い頃に行きつけだった着物店なのだろう。
「開けてみろ」と祖母が得意げに促す。
美乃里はまだしっかりとしている紙縒をほどいた。
よほど思い入れのある一枚となれば娘時代の振袖か。
それとも、思い切って手を出した伝統工芸品や作家物か。
果たして包みを開いて現れたのは、透き通った布地の上にもやもやとした模様がうごめく、見たこともない着物だった。
「うそ、もしかして紗袷じゃない!」「いいもんだべ」




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