それなりの時間を過ごしてくると、人生には妙なことが起きるものだ――。<br />昔なじみのミルク・コーヒー、江戸の宵闇でいただくきつねうどん、思い出のビフテキ、静かな夜のお茶漬け。<br />いつの間にか消えてしまったものと、変わらずそこにあるものとをつなぐ、美味しい記憶。<br />台所のラジオから聴こえてくる声に耳を傾ける。<br />十二人の物語。<br />滋味深くやさしい温もりを灯す短篇集。<br />