山の侘び寺で穏やかな生活を送っている白雀尼にはかつて、真島隼人という慕い人がいた。<br />が、隼人の四年余りの江戸遊学が二人の運命を狂わせる……。<br />心に秘やかな思いを抱えて生きる女性の意地と優しさ、人生の深淵を描く表題作ほか、武家社会に生きる人間のやるせなさ、愛しさが静かに強く胸を打つ全五篇。<br />前作『鷺の墓』で「時代小説の超新星の登場」であると森村誠一氏が絶賛。<br />(解説・結城信孝)