蔵前の札差・大口屋文七の女房みつが、桜が満開の頃、出逢茶屋で役者と心中した。<br />しかし文七は、女房の不貞を信じられず、無理に殺されたに違いないと自ら探索をはじめる。<br />一方、大口屋の大旦那が、〈花魁・瀬川に惚れさせた男に自らの持っている貸し金の証文を全部くれてやる〉と、文七たち八人の分家の主に宣言したが……。<br />妻を亡くした文七の無念とそれを支える瀬川との、まっしぐらな愛と心中事件の驚きの真相を描く著者渾身の傑作長篇。<br />(解説・縄田一男)