’ぬるい怖さ’は、もういらない。<br />今や、枕元に深夜立っている白い影よりも、サバイバルナイフを口にくわえながらベランダに立っている影のほうが確実に怖い時代なのである。<br />本書は、記憶のミスや執拗な復讐、通り魔や変質者、強迫観念や妄想が引き起こす怖くて奇妙な四十八話の悪夢が、ぎっしりとつまっている。<br />現実と噂の怪しい境界から漏れだした毒は、必ずや、読むものの脳髄を震えさせるであろう。<br />(解説 春日武彦)