専門学校を経て職に就き、それなりには充実した日々。<br />とはいえ、スイに見送られて湯乃鷺をあとにして以来、緒花はいまだ喜翆荘を訪れることができていない。<br />喜翆荘を復活させる手立てがさっぱりわからないからだった。<br /> しかし、緒花の気づかぬところで、気鋭の写真家だった亡父・綾人の遺作が、喜翆荘と湯乃鷺温泉街に、思いもよらぬ風を吹き込んでいた……。<br />