君はシトロエンDSに乗ったことがあるか。もしなければ、一度は体験してみるがよい。できれば夜に。それも住宅街の路地を抜けていくような状況で。その先でT字路にぶつかれば完璧である。なお理想を言えば、そのT字路の正面は長く続く壁であってほしい。DSはいったんそこで止まって、さて右へでもステアリングを切って曲がっていこうとするだろう。その時、不思議なことが起こる。何かが動いているのが感じられる。最初はたぶん何が起こったのか、理解できない。ややあって気が付くはずだ。ヘッドライトの光が左から右へと動いているということに。シトロエンDSのヘッドランプをハイビームにしたままステアリングを切り始めると、正面の塀を照らしていたハイビームの光がするすると正面から右へと移動していく。左へきれば光も左へ。シトロエンDSのハイビーム用ヘッドランプは、ステアリングに連動して首を振るようになっているのだ。DSの時代のシトロエンは、何についても独自の考察と独創とを第一義としていた。その頃世界的に流行しつつあった四灯式ヘッドランプにしても、シトロエンの人々はただランプの数を増やすだけのことはしたくなかったのだろう。内側のハイビームニ灯を油圧でステアリング操作に連動させ、車が曲がっていく方向を照らし出すような新しい機構を考え出したのである。しかもこのヘッドランプは、リアサスペンションが自動車高補正機構を備えていたことから、後席に重量がかかっても車高が一定に保たれるので、光軸が変わらない、すなわち対向車を幻惑しないという優れた特徴も備えていたのである。※本商品と他商品を一緒に注文された場合、在庫状況やメーカー販売期間によっては注文を分割発送させていただく場合がございますので予めご了承ください。ご注文後のキャンセルは原則、承っておりません。事前に十分にご検討いただいた上でご注文ください。