「長年の夢を叶えて私が撮影に向かったのは、アフリカの北西部に位置するモロッコ王国。目的はその北部にある通称「青の街」・シャウエンのネコたちです。シャウエン(正式にはシェフシャウエン)は、山脈の奥の小さな街。不便な場所にも関わらず、世界中の旅行者を魅了しているのが、街中を染める美しい青色です。特に旧市街地(メディナ)は、家の壁も道の階段も、濃淡の豊かな青で染められていて、訪れた人は「まるでおとぎ話に迷い込んだようだ」と感じます。理由は諸説ありますが、最も有力なのが、かつてヨーロッパから追われ、シャウエンに住んだたユダヤ人が青く染めたという説。ユダヤ教において青が神聖な色であったことから、家や道を青色に染めていったのだとか。第二次世界大戦後、イスラエルが建国されると、ここにいたユダヤ人のほとんどはイスラエルへと移住しましたが、町を青色に染める習慣だけは残った、といわれています。ほかにも、暑さしのぎや虫除けのため…など現実的な説もあります。 美しくのどかな街では、外で暮らすネコたちが人々の暮らしに溶け込み、まるで景観のひとつのような趣で、時間を忘れて写真を取り続けていました」(本文まえがきより)