人の素を撮りたいと思った。<br />とりたてて撮りたいと思ったのは、笑顔が素敵な女の子だった。<br />僕は彼女のことが「好き」だと思った。<br />それは恋愛感情としての「好き」ではなく、人間としての「好き」だった。<br />彼女の「好き」と僕の「好き」は、意味の違うものだった。<br />もっと素の表情が見たくて、彼女の深いところへ、踏み込んで踏み込んでいった。<br />気付いたら関係性が恋人に近いものになっていた。<br />でも、恋人として自分に必要な存在ではなかった。<br />そんなふうに思ってなお、彼女と付き合うことはできなかった。<br />僕はずるい。<br />