2006年12月。<br />窓の向こうに忽然と東京タワーが現れた。<br />それは隣接する老朽マンションの解体工事が終盤に差し掛かり、現場を覆っていた防音壁が取り外された瞬間の出来事だった。<br />以来、その窓辺は私が4年後に部屋を退去する日まで、いついかなる時にも非日常的風景を享受できる特別な場所となった。<br />が、そこで目撃したのは、意外にも寡黙なタワーの佇まいと絶えず変化をやめない饒舌な空との共演。<br />24時間、365日、同じ景色の繰り返しはなかったのである。<br />