環境経済学:『沈黙の春』から気候変動まで
「コースの定理」から「スターン報告」まで、環境経済学説と公共政策の基礎をつかむレイチェル・カーソンが『沈黙の春』を発表したのは1962年のことである。
同書は、マラリア蚊に効果のあった殺虫剤DDTを大量に散布することが深刻な環境汚染をもたらすと警告し、その後の環境政策の嚆矢となったのは周知の通りである。
これに先立つこと10年、イギリスもロンドンスモッグの甚大な被害を受けて、環境規制の法制化がはじまり、1956年には大気浄化法が制定されている。
それから半世紀以上が経過し、環境問題は社会運動やエコロジー運動というよりも経済学の一大分野として確立した。
この間開発されてきた経済モデルなしには、問題への有効なアプローチは困難になっている。
本書は、そうした道具立てをこれ以上ないほど分かりやすく伝える本になっている。
コースの定理、規制アプローチと市場アプローチ、環境の費用計算、そして気候変動のさまざまな枠組みというように、それぞれのモデルが過不足なく、適切に配置されているのが最大の特長である。
気候変動はじめ環境問題への関心はかつてない高まりをみせている。
巻末にこの数十年の出来事を概観する訳者解説と年表も付した。
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