純愛 エセルと陸奥廣吉
17年間、互いに待ち続けたエリート外交官と英国女性との大ロマン! 日清日露の戦争、関東大震災、大きくうねる歴史を背景にした大絵巻!! 明治の中ごろに外相になった元勲・陸奥宗光(むつむねみつ)は有名だが、その長男の廣吉(ひろきち)のことはあまり知られていない。
宗光の外相就任の少し前に、廣吉は英国に留学した。
1887年のことである。
その翌年、彼は一人の女性に出会う。
エセル・パッシングハムという、一つ年上の女性だった。
廣吉は20歳である。
交際が始まり、二人は互いに憎からず思うようになる。
帯英中のある時期から、廣吉は日記を英語でつけた。
毎日欠かさず克明に書き続けた。
●桜の花の咲く頃、一人の女がイギリスから日本に着いた。
ケンブリッジに留学した一人の男との約束を守って。
知りあってから二十年近い歳月が流れている。
電話も飛行機もない時代、二人を結びつけたのは、愛をまっとうする強い意志の力だった。
死にいたるまでその意志は続く。
一瞬の間に燃え上がる恋も、偶然の出会いに忘れがたい愛もある。
しかし、もっとも難しいのは、意志を持続することだ。
「ある恋の物語」はいくらでもあるが、自分の生き方を懸けた愛に出会うことは少ない。
「純愛」という言葉には、一筋の思いがあり、意志がある。
そこには私たちが忘れてしまった夢がある。
――「はじめに」より
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