歴史は、資料の積み重ねではない、むしろ一個の感情である。<br />――著者は、古老の「むかし噺」に耳を傾けるように古今の文学を逍遥する。<br />酒を慈しみ、愛犬を偲び、信念を述べ、精一杯生きて逝った人々に思いを馳せる。<br />どんな短い一章にも、半世紀にわたる作家人生の精髄が刻み込まれ、暮しの下敷きである「過去」への、敬愛の念が込められている。<br />我に返る時間を与えてくれる一冊。<br />