締切の夜、書斎は険しく暗い。<br />しかし一人ではない。<br />開け放った窓に響くトラックのエンジン音や、本棚におさめたドイツ製のクレヨン……。<br />何気ない物事がいのちを帯びて、わたしのペンを鼓舞し、触発する。<br />わたしは今夜も、彼らに囲まれてペンを走らせる。<br />――その書斎は、後に阪神大震災によって壊滅した。<br />追憶の思い新たに、震災時の日記を併録する。<br />