Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男
藤田哲也という天才科学者(1920-1998)がいた。
専門は気象学。
32歳のとき渡米し、シカゴ大学の教授にまで上り詰め、「Mr.トルネード(竜巻)」と呼ばれた。
藤田の人類への最大の功績は、1970年代に続発していた飛行機事故の原因を「ダウンバースト」という気象現象だと突き止め、飛行機事故を激減させたことである。
「ダウンバースト」とは、突発的に非常に狭い範囲で生じる下降気流であり、起きる直前でなければ、予測不能である。
今日、私たちが安心して飛行機に乗れるのは、彼のおかげなのだ。
だが、この功績は、藤田が活躍したアメリカでは広く知られているが、日本ではほとんど知られていない。
それだけではない。
藤田がどのような人生を歩んだのかが、わかってきたのは、ここ数年のことだ。
本書の著者・佐々木健一氏は、そんな藤田哲也の人生に強く惹かれ、アメリカ全土、総移動距離3万キロを超える取材を敢行して、その人生を追いかけた。
そして、NHKのテレビ番組「ブレイブ 勇敢なる者」シリーズの第一弾として、藤田の人生を描く「Mr.トルネード」を制作した(2016年5月2日放映)。
本書は、「ダウンバースト」現象の解明を軸に、番組には収めきれなかった成果を盛り込んで書き上げられた、世界初の藤田哲也の本格的評伝である。
評伝でありながら、小説より面白い。
藤田の映画が見たくなる。
天才科学者の人生は、「数奇な人生」(singular life)でもあったことが明らかになる、わくわくする科学者の物語がここに誕生した。
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