美しい「花」がある、「花」の美しさという様なものはない。<br />色、音、光、香り、言葉、あるいは不可視な感情の痕跡――。<br />芸術に触れ、真につき動かされたときに遭遇する何かこそが、真の美であり、実在なのだと語った小林秀雄。<br />ベルクソン、ランボー、モーッアルト、ドストエフスキー、本居宣長らとの出会を通じ、小林が生涯にわたって考え続けたのが美をめぐる問題だった。<br />不世出の批評家が語りながら考え、書きながら生きた軌跡を、その現場に降り立つように蘇らせる試みにみちた長編評論。<br />