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ひと目で分かる 孫子の兵法

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『兵法』は、およそ二千五百年前の中国の将軍、孫武(孫子)が残したといわれる古典である。
軍事分野の必読書であるだけでなく、ビジネスや政治、経営、マーケティング、さらにはスポーツの指南書としても親しまれている。
『兵法』は簡潔であり、経典のようなリズムと神秘的な雰囲気を持った文体で書かれている。
その古さと荘厳さから、まさに伝説として語り継がれている。
絵で語ることを生業としている私が初めて『兵法』を読んだとき、その文章が、そこには描かれていない図につけられたキャプションのように見えた。
そして、二千五百年分の埃をかぶった世界中で知られる古典に、図やグラフを添えて新たな現代的・視覚的イメージを与え、人々が「争い」について考える新たな道を作り出すという試みに、抗いがたい魅力を覚えるようになった。
この作業を始めた当初はかなりの困難を覚えたものだが、二章も半ばに差しかかる頃、孫子の思想が、彼の伝説を聞いて抱いた人物像とは違い、血みどろで野蛮なものではないと気づかされることになった。
むしろ、彼の説く道理に深く共感し、好意さえ抱くようになった。
望むままにページからページへ飛び回り、気に入ったところで手を止めてみてほしい。
結局のところ、本書の中で一番大事な一節というのは、それぞれが自身の経験を最もよく反映するイメージを描けた部分なのである。
『兵法』が多くの人に読まれるようになったのは、孫子の見識が大小問わず、あらゆる「争い」に通用するからだろう。
『兵法』のいう戦争とは、人生におけるさまざまな「争い」の比喩にすぎない。
彼の提言が生徒会長に立候補した十歳の子供にも軍隊の将軍にも等しく有効であるのは、戦争という行為になぞらえつつも、実は問題解決に主眼を置いた、メタファーのメタファーだからなのである。
私たちは誰もが何かのために争っている。
そして幸いなことに、孫子がそれに勝つための心構えを教えてくれている。
(序より)




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