赤十字の創設者アンリ・デュナンは、比類なき情熱で抜群の行動力を示す一方で、自らつくった組織から常に孤立してしまう独断的な性格の持ち主であった。<br />そのため、赤十字以外にも、彼の手を離れてはじめて、存分にその機能を発揮しだした事業は数多く存在する。<br />本書は、彼の生い立ち、彷徨生活から、破産、落魄の死までを辿ると同時に、彼を生んだ十九世紀ヨーロッパの、領土拡張主義と人道主義とが頂点に達した時代背景を描く。<br />