「この通りのことを見たのか」。<br />検閲が日常だった時代、警視庁特高部検閲課の警察官が作家・石川達三を取り調べた。<br />石川が「これは小説である」旨答えると、デマを広めたと自供したことにされた。<br />石川が書いた戦争小説は、掲載誌の発禁だけではなく、編集者や作家が裁判にかけられる事態に発展した。<br />政府は、明治時代からじわじわ言論統制を強化してきた。<br />戦争で初めて統制が行われたわけではなかった。<br />