私たちは長崎にいた
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原子野に残されたものは、灰とわずかに生き残った者たちと、その心に深く刻み込まれた「ひび」だった。
命をながらえた者は生き残ったがゆえに、「私は隣人を見殺しにした」、「私は仕方なく盗みをした」といった、生涯消えることのない心の痛みを抱え、さらにはこの「私」を「彼」に置き換えた記憶も引きずることになる。
本書は、死の間際にある永井博士が編者となり、生存者の壮絶きわまりない体験で構成された「平和への叫び」である。
証言者の中には、博士の2人の子も含まれ、妹カヤノの感想は、お母さんも一緒に天に昇ったのだから「原子雲は、あんなにきらきらと美しかったのです」で結ばれる。
一方、兄誠一の話は、次の一節で締めくくられている。
「刀をふり上げてぼくを切ろうとする人から、刀をもぎ取るもよいが、刀を持たせたまま、柔らかく胸に抱きこむ勇気と知恵を、ぼくはほしい」
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