本書は,コンラッドの前期作品における「裏切り」の問題を,主人公のみならず語り手の問題としてもとらえ,自らを「裏切り者」として発見し,遂には解放しようとする語り手を通して,前期コンラッドが「裏切り」を巡る道徳的問題から脱却していく軌跡を辿る。<br />