舞台は江戸時代の下町、腕のいい刺青師が偶然みかけた娘の足。その娘こそ、刺青師の求める肌の持ち主だった。1年後、娘が訪ねてきた。麻酔薬で眠らせ、一心に女郎蜘蛛を娘の背中に刺し込む刺青師。谷崎潤一郎24歳の処女作「刺青」。表ではガキ大将とひ弱な男児だが、家に帰るとその立場が逆転。巻き込まれた主人公と男児の姉も加わり、4人のイジメ遊びが展開される。踏みつけたり、姉を縛ったりしての遊びの果てには。子供の倒錯した世界を描く「少年」。耽美で、サディズムとマゾヒズムが交錯、それでいて決して下品にならない格調高い物語の数かず。ほかに、「秘密」を収録。著者初期の短編集。