「世界はこんなに弱くてもろくて、滅ぼすなんて簡単なんだってことを……ウエダサマが教えてくれたんですよ」7年前、旭ヶ丘の中学校で起きた、クラスメイト9人の無差別毒殺事件。結婚を機にその地に越してきた私は、妻の連れ子である14歳の晴彦との距離をつかみかねていた。前の学校でひどいいじめに遭っていた晴彦は、毒殺事件の犯人・上田祐太郎と面影が似ているらしい。この夏、上田は社会に復帰し、ひそかに噂が流れる――世界の終わりを見せるために、ウエダサマが降臨した。やがて旭ヶ丘に相次ぐ、不審者情報、飼い犬の変死、学校への脅迫状。一方、晴彦は「友だちができたんだ」と笑う。信じたい。けれど、確かめるのが怖い。そして再び、「事件」は起きた――。※本作品は野性時代 2007年2月号?2009年1月号連載に大幅加筆修正したものです。