エベニーザー・ツィーザーは五百十一歳の老人だが、若さと美しさを保ち、大邸宅で自由気ままに暮らしている。その秘密は、屋根裏に棲むビーストとの取引だった。ビーストに珍しい食べ物をあたえ、その見返りに現金や品物、そして、不老薬をもらっているのだ。あるときビーストから「今年は、人間の子どもを食べたい」と要求され、エベニーザーは孤児院で見つけた、薄汚れた女の子ベサニーを連れてきた。ベサニーは手に負えないトラブルメーカーだったから、生け贄にはうってつけだ。しかし、ビーストはガリガリの女の子を見て「太らせてから連れてこい」と言う。そこで、エベニーザーはあの手この手で、べサニーを太らせようとする。「ちゃんと食事をしたら、なんでも願いごとがかなう」と嘘をつくが、それを信じたベサニーが「お願い、死んだ父さんと母さんを生き返らせて」と言うのを聞いて、エベニーザーはこれまで感じたことのない、不思議な痛みを覚えた。せめて、ビーストに食われるまで、ベサニーに楽しい時間を過ごさせてやろう、と思うのだが……。わがままな老人といたずら好きの少女が織りなす、てんやわんやの大騒動と、奇妙な友情を描く、痛快コメディ・ファンタジー。