あらゆる縛りから逃れたいと願う二人の女性は、異国の地・日本で出会った――。両親の反対を押し切り、日本の大学で日本語を教える台湾人の柳凝月(りゅうぎょうげつ)は、新疆ウイグル自治区出身で、日本の大学院を目指す生徒の玉麗吐孜(ユーリートゥーズー)に初めて会った時から魅了されていた。玉麗吐孜もまた、柳凝月に惹かれていた。ある日、玉麗吐孜の元恋人の同居人が部屋を出て行くと言い出し、家賃問題に悩んでいた彼女は付き合い始めの柳との同居を考えたが、今の距離感が心地よく、これ以上親密になるのを恐れていた。一方、柳は玉麗吐孜の受験が上手くいったら一緒に暮らし、いつか結婚しようという想いが募っていた。期待もあえなく、玉麗吐孜は不合格通知を受け、日本に残る理由を失っていた。生国の政治情勢、家族のこと、隠している自分のセクシュアリティー……。共通の言語を持ち、語り合い、玉麗吐孜のことを分かっていると思っていた柳だが、玉麗吐孜が背負う重りを知らずにいた自分に気付く……。今、注目の新日本文学の旗手が描く、静かな祈りの物語。