「物語が世界から消える?」子狐に山姥、乙姫に天人、そして龍の子。民話の主人公たちが笑い、苦悩し、闘う!「全体の形があらわになった瞬間、全身に鳥肌の立つような感動を覚えた」阿部智里(作家)【出版社からのコメント】朝井さんと日本各地へ行き、昔から伝わるお話を聞かせていただきました。湖や地方の山、遺跡に滝。ブナ林の中を走り回り、田んぼの中で偶然みつけたお地蔵さんを拝んだことも。そんな四季折々の一瞬一瞬が集められ、物語となり、生き物のように動きはじめました。「物語よりおもしろいものがある」と言われる厳しい時代の中、朝井さんが命を吹き込んだ’物語たち’は世界に問いかけます。物語たちがいなくなってしまったら、どうするでしょうか?本作品が、物語に関わるすべての人に届いたらと切に願っております。 昔、むかしのそのまた昔。深山の草原に、一本の名もなき草がいた。彼のもとに小生意気な子狐が現れ、「草どん」と呼んでお話をせがむ。山姥に、団子ころころ、お経を読む猫、そして龍の子・小太郎。草どんが語る物語はやがて交錯し、雲上と雲下の世界がひずみ始める。――民話の主人公たちが笑い、苦悩し、闘う。不思議で懐かしいニッポンのファンタジー。〈第十三回中央公論文芸賞受賞〉(解説:阿部智里)章ノ一 小さき者たち草どんと、子狐団子地蔵粒や亀の身上がり猫寺章ノ二 勇の者たち通り過ぎる者お花湖へ小太郎章ノ三 物語の果て草どんと、子狐と山姥神々の庭空の下解説:阿部智里