アルプスでこぼこ合唱団
したたかでアンフレンドリーな、アルプスの小さな山国スイス。
在住20年にもかかわらず、いまだここが「居場所」とはいえない――。
そんな悶々とした中で出会ったのは、妙に謎めいた、多国籍な仲間たちの合唱団だった。
悪戦苦闘の日々、少しずつ謎がとけてゆく仲間たちと、声を合わせて歌いながら「スイスという国」に根を張ってゆく、異文化合唱エッセイ。
(本書「あとがき」より) 居場所ってなんだろう。
歴史のどの時点で、世界のどの地点に生を受けるかなど、偶然の出来事でしかない。
たまたま居合わせた場所や状況や歴史的時間の中で、人はどうやって居場所を探し、それを耕していけるのだろう。
居心地の良い場所が築きにくい時に、息苦しい時に、仲間に入っていけない時に、どこにどうやって慰めを見つけたらいいのだろう。
花の種が風に吹かれてどこかの土に着地する。
よく知らない両隣の人たちと共に声を合わせて歌いながら、そんなイメージを私は度々思い浮かべていた。
小さな種が、着地したその場所でむっくりと芽を出し、固い土の中にじわりじわりと根を張っていく様を想像した。
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