熱砂の国サマールの皇太子・ジャリールの妃として迎えられる七生の溜め息は重かった。<br />両親の会社を救うために自分は周囲を欺き、偽りの婚礼を遂げねばならないのだ。<br />王者の威厳を放ち、雄々しくも寛容さの滲むジャリールと対面して、彼の魅力を感じる程その心苦しさは増していく。<br />しかし、婚礼の儀が終わり初夜を迎えると、ジャリールは人を屈服させることに慣れた傲慢な顔を曝す。<br />弱みにつけ込む囁きと甘い毒の様な快感に支配され、七生は―。<br />