義兄の興健堂製薬社長・間崎慈宇郎に長年世話になっている岩切清彦には、不安があった。<br />実は、慈宇郎が中風で寝たきりになって以来、その若妻・姫子と深い仲になってしまったのだ。<br />そんな折しも、興健堂製薬は新薬開発をめぐって窮地に追い込まれ、薬事監査員の公職にある清彦は、慈宇郎からとんでもない要求を押しつけられるのだった(「炎の命乞い」)。<br />不倫の狭間に忍び寄る殺意と惨劇を描く珠玉五篇を収録。<br />