重役コースをはずれた監査役、54歳の西村時夫に仕事はほとんどない。<br />しかしその肩書には、抜群の信用があった。<br />銀座のクラブのママに頼まれて、サラ金から五百万円の金を借りてやったのだったが……。<br />「自己破産」を生むサラ金の手軽さ。<br />ふとしたはずみから、その地獄に落ちた初老の会社員の悲哀。<br />ユニークな着想と巧みな展開で描く、等身大の現代人群像。<br />