背徳のときめき
週末の夜、男は満員電車の中にいた。
急ブレーキのせいで体勢を崩し、何とか持ち直すと、身体の前面で固定された右腕が何か柔らかいものに触れていた。
目の前には、紺色のスーツを着た女性が立っている。
ポニーテールの下から覗くワイシャツの襟からの雰囲気や、スーツの肩口の新しさから見ると、就活生か新入社員らしい。
赤い縁のメガネで、真面目で大人しそうな顔立ちだった。
男は腕を抜こうとするが、カーブに入ったところで咄嗟に彼女の尻を掴んでしまう。
マズいことになったと思いながらも、ふいに高揚感に襲われた。
そして、痴漢行為はエスカレート。
生地越しに尻を撫で回し、ファスナーを下げると、下着に手を入れる。
ここで次の駅のアナウンスが聞こえてきたので、慌ててファスナーを戻した。
駅に着くと、彼女は先に電車を降りていく。
ホッとした男も改札へ向かうが、そこで先ほど弄んだ彼女にシャツを掴まれた。
「北原寛治先生ですよね。
今でも古典と世界史の兼任なんですか?」。
正体を言い当てられてしまった男は……。
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