たとえば万葉集をひもとけば、千年以上前の言葉が、そこにはある。<br />私が口ずさめば、千年の時空を超えて、鮮度を落とすことなく言葉は蘇る。<br />言葉は、永遠なのだ。<br />けれどたとえば、今日私が恋人に言った「好き」という言葉は、今日の二人のあいだで成立している、たった一度きりのもの。<br />言葉は一瞬のものでもあるのだ―。<br />読むこと、詠むこと、口ずさむこと。<br />言葉を観察し、発見するエッセイ集。<br />