そこには、いた。<br />漠とした不安を抱え、泣いていた子供の自分が。<br />桟橋を離れていく船の上に、白いブラウスの少女を探した少年の自分が。<br />会社を辞めることを1年悩み続けた10数年前の自分が。<br />そしてそこには、いつも黄色に点滅する信号があった。<br />「もうすぐ赤」をアピールする信号に僕はいつもあわて、とまどっていた――。<br />少年時代の忘れがたいあの日、憧れた異国の山々、息子、娘、妻、大切なものたちへのゆれる想いを綴ったエッセイ集。<br />