深夜三時に起きて朝刊を配達し、古いアパートに帰って少し眠り、鉢植えの世話をする。<br />友人も作らずもう六年、百合原(ゆりはら)はこんな毎日を続けていた。<br />あるとき集金先のマンションで、越してきたばかりの滝本(たきもと)という男と出会う。<br />滝本は百合原の顔を見た途端、言葉をなくすほど驚いていた。<br />実は百合原はかつて事件を起こし、その間の意識がない。<br />そして滝本には十年前に姿を消した忘れらない恋人がいたようなのだが……?