あかり合わせがはじまる
女優・岸田今日子のはじめてのエッセイ集。
劇作家・岸田国士の次女として生まれた著者が、新劇女優の世界に入り、結婚、長女誕生、離婚という道程のなかで、折々に感じたことを綴る珠玉のエッセイ。
●女優のくせにお客様の入った初日より、その前の舞台稽古の日が好きだ。
大道具が組み立てられ、照明器具が吊るされ、場面ごとのあかり合わせがはじまる。
もうすぐ現実とは次元のちがうあかりの中に呼び出されて、自分ではない人物を生きなければならない。
それを待つ間のあの不安定な、しかも魅力的なひとときを、なんといおう。
けれどもしかしたら、俳優とは限らず、わたしたちの生活は、いつ舞台に呼び出されるかわからない、舞台稽古の日の楽屋なのだろうか。
あかり合わせは、もうはじまっているのだろうか。
(著者あとがきより)
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