牢屋のような部屋で、刑罰のように物を書く。<br />そして無性に、二条の、西行の、一遍のような放浪に憧れる……。<br />風に背を押され、次の町へ次の村へ、身ひとつになって、たったひとり、無目的の終りのない旅に、という。<br />さまざまな風景の中の、さまざまな出合い、触れ合い、その一瞬一瞬の命の炎を、そして紅葉(もみじ)する中尊寺での得度後、道元の「すててこそ」の境地を得る1年の心の移りを、華麗な筆でつづる。<br />