下駄と靴と片足ずつ履いて――その男は二筋の道を同時に歩んだ。<br />地方の一紡績会社を有数の大企業に伸長させた経営者の道と、社会から得た財はすべて社会に返す、という信念の道。<br />あの治安維持法の時世に社会思想の研究機関を設立、倉敷に東洋一を目指す総合病院、世界に誇る美の殿堂を建て……。<br />ひるむことを知らず夢を見続けた男の、人間形成の跡を辿り反抗の生涯を描き出す雄編。<br />