カリフォルニアで夫を看取り、二十数年ぶりに日本へ愛犬と帰国。<br />’老婆の浦島’は、週の四日は熊本で犬と河原を歩き、植物を愛でる。<br />残りは早稲田大学で、魚類の卵のように大勢の若者と対話する。<br />移動の日々で財布を忘れ、メガネをなくし、鍵をなくし、犬もなくしかけた……思えば家族を、あらゆるものを失って、ここに辿り着いたのだった。<br />過ぎ去りし日を噛みしめ、果てなき漂泊人生を綴る。<br />(解説・ブレイディみかこ)