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被災地で生き方を変えた医者の話

大学病院勤務の神経内科医として順調にキャリアを重ねてきた著者は、2011年3月の東日本大震災の翌年、職を辞し、福島第一原発から一番近い病院に赴く。
時の流れとともに風化する震災の跡地にとどまる「外部者」として、診療・地域再生に取り組む中での葛藤・逡巡、そして喜びを生々しく語るノンフィクション・エッセイ。
帯文は、南相馬市在住で著者とともにマラソンチームを形成する作家の柳美里氏。
冒頭の「小鷹さんは誠実な人だ」の一文に、全ての想いが凝縮されています。
東日本大震災が発生してからも、熊本や鳥取など、日本中で地震は継続している。
いつの世も、どこの場所でも震災は起こり得る。
直後の深刻さや被害を最小限に食い止めるためのノウハウ、災害の時にとるべき行動というような言説も大切だが、被災地に移住して、そこで生活した支援者の生き方というものも知らせておかなければならない。
そう考えると、風化した被災地において、いまからでも語れることは、そこで変化し続けてきた外部者の心情なのではないだろうか。
課題はまだまだ残されている。
日常に復するはもちろんのこと、いやむしろ、回復してから感じる葛藤や逡巡(しゅんじゅん)のような想いを残しておくのだ。
もし、私にできる最後の仕事があるとしたらそういうことだ。
何かを得たいがために、自分の何かと引き替えに続けているわけではないが、「気が付いたら調子にのってやっていた」という想いを説いておきたい。
本書は単なる震災の記録としてではなく、一人の医療者が、被災現場で暮らすことによってどう変化していったのか、その足跡に注目してお読みいただければとありがたい。
もちろん、「私のケースが理想だ」ということを言いたいわけではないし、「これが支援者のとるべき行動だ」ということも、けっして言えない。
ただ、一時の支援のつもりで来たはずだった医師が、そこで生活の基盤を築き、さまざまな葛藤をくぐり抜け、良いこともあれば悪いこともあり、優しくもあり厳しくあるこの南相馬市というひとつの被災地に溶け込んでいった、そのいきさつを伝えておきたい。
支援活動によって芽生えた新しい価値観を理解していただき、これからも震災の発生し続けるこの国において、皆さまの行動原理の参考になれば幸いである。
―――はじめに■著者 小鷹昌明




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