七十代後半の坂を上りきり、八十歳を超えた作家が見つめる老いの日々。<br />身の回りには、薄い横線で消された名前の目立つ住所録。<br />バッグは肩からすべり落ち、タタミから立ち上がるのに一苦労。<br />そして頭に浮かぶ疑問は、なぜ歳を取ると何事も億劫になるのか、病気の話にかくも熱が入るのか、「ピンピンコロリ」は本当に理想なのか――一年一年、新しい世界と向き合って歩む日常と思考を丹念に描いた、心に響くエッセイ。<br />