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バブルを抱きしめて

平成が終わろうとしている今、バブルを抱きしめた女・島村洋子が贈る時代をともに生きてきた者たちへの応援歌それを経験していない人には信じられないことだろうけど、いわゆる「バブル」のとき私はこれが永遠に続くと思っていた。
いや、私だけではない多くの人がそう思っていただろう。
一万円札でタクシーを停めたとか、タクシー券の束を振っていたとか、みんないうが、たとえば私は六本木から銀座に行くのにタクシーがつかまらず、荻窪の友達に電話して六本木までタクシーで来てもらった。
そしてそのタクシーに乗って銀座で降りて友達にはそのまま荻窪に帰ってもらった。
友達には二万円渡したような気がする。
なんたる壮大なムダ。
友達を呼んでいる間に歩け! と今なら思うが、その時は特別に変わったことをしている感覚もなかった。
泡は抱きしめれば割れるのだろう、シャボン玉のように。
終わりが来ることを無意識に察知していたからあんなに必死でみんな大騒ぎしていたのかも知れない。
光が明るければ明るいほど影が暗い、とはよく言われることである。
しかし闇の暗さも弾ける泡も、ねずみ色の生ぬるさよりは良かったのではないか。
私はあの頃、六本木にいた者として少し胸を張りたい気すらしている<まえがきより抜粋>『新潮45』の人気連載エッセイが待望の単行本化!




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