狐狸庵閑談
『夫の宿題』という本をご存知だろうか。
平成8年に亡くなった遠藤周作氏の妻、順子夫人がその結婚生活、そして共に遠藤氏の病魔と闘った生活について語った手記であり、今多くの読者の注目を集めている。
では当の遠藤周作氏は、その晩年、いかなる心境にあったのだろうか。
本書は自らの身辺雑記から、日々のニュースに対する所感まで、好奇心の強い著者らしく、幅広い話題の詰まったエッセイ集である。
たとえば、美味い蕎麦屋を見つけたかと思えば、家族に嫌がられながらも奇妙な鳥を飼ってみる。
正月のテレビのくだらなさには怒りを抑え切れず、日本の教育制度にも一言あり。
さらに、老いを迎える覚悟、死生観、信仰心についても語る。
今思えば、自らの死を迎える清冽な覚悟がそこにあったといえる。
しかし、闘病生活の暗さはみじんも感じさせず、ユーモア溢れる狐狸庵節が冴え渡っている。
著者の人柄がつくづくしのばれる、ファン必読の一冊である。
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