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愛淫幻夢 水底のおくつき

「螢耶(けいや)に逢いに行ってくる」諒(りょう)が、日記にそう書き残して姿を消したのは、昭和2年の穏やかな秋の午後だった────。
華族の御曹司の青年と×父親が囲う振り袖姿の美少年が繰り広げる、耽美官能ロマンス。
父と息子、そして同性の若き愛人。
愛憎と狂愛の果てに明らかになる真実とは────?大正12年の秋───関東大震災で被災した玖絛(くじょう)子爵家の御曹司・諒は、邸宅修復工事の間、両親とともに軽井沢の別邸で過ごすことになった。
別邸は、華族や富裕層の別荘が建ち並ぶ地域から少し離れた、雑木林に囲まれた三日月型の沼の畔に佇んでいる。
そこには洋館の母屋とは別に‘月華庵’と呼ばれる数寄屋造りの離れがあり、家人や使用人は立ち入りを禁じられていた。
しかし、退屈な日々を持て余した諒は、望まぬ結婚を強要する父への反発心とちょっとした好奇心に駆られて禁を破り、父の秘密を知ってしまう。
父・榮(さかえ)は、艶やかな振り袖に身を包んだ市松人形のような美貌の少年・螢耶を月華庵に軟禁、凌辱していたのだ。
螢耶は没落した某伯爵家の子息で、借金の立て替えを条件に、玖絛家に買われた身だった。
愛人を持たぬ約束で母と結婚したはずの父の不貞行為に嫌悪感を抱きながらも、その愛人である螢耶に次第に魅せられていく諒。
同情が恋情に変わるまでに、多くの時間は必要なかった。
肉体関係をもった二人は、玖絛子爵の目を盗んで秘密の逢瀬を重ねるが────。
※表紙制作協力:鎌田幸美※挿絵は収録されていません




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