国の重要無形文化財である「丹波布」は民芸運動の中心人物・柳宗悦によって名付けられた。兵庫県の山間の村、丹波の佐治で「しまぬき」と呼ばれ、明治の半ば頃まで盛んに織られていたが、紡績糸の出現や機械織機に押され、すっかり廃れてしまい、昭和初期には「幻の布」と呼ばれるようになっていた。足立康子さんは、嫁ぎ先の蔵の中で「天保六年の縞帳」を見つけ、そのモダンな縞に魅せられる。昭和29年、佐治の有志は丹波布復興協会を結成し復興丹波布を織り上げること成功する。そして、康子さんたちがその技術を習得することにより丹波布は復興を実現した。しかし、せっかく復興を実現できてもそれを後世に伝えることができなければ、また消滅してしまう。なかなか現れない継承希望者、高齢化する復興実現当時の仲間たち、そんな困難の中、康子さんは、58年間、復興した丹波布の古法を守り、技術の保存と継承に力を尽くした。その努力はやがて実を結び、夢の丹波布伝承館がオープンする。 本書は、先人から受け継いだ復興丹波布の技術を何とかして後世に残そうとする足立さんたちの必死な姿をドキュメンタリーで伝え、また、国の無形文化財に指定された丹波布の特徴や魅力、丹波布と丹波木綿の違いなどにも言及する。