米軍提督と太平洋戦争
■太平洋戦争を戦った、米海軍の主要なリーダーを紹介する1冊。
嫌われ者の天才――キング処世術に長けた調整型――ニミッツ平凡とされながら実戦で結果を残した――スプルーアンス知られざる名将――ミッチャー期待はずれとされた有望株――フレッチャー‘本当の太平洋戦争’を理解するためには、日本軍だけではなく、米海軍と米海軍の主要リーダーたちを知る必要がある。
リーダーたちの経歴・戦歴から、知られざる人物像、エピソード、軍内部での人間関係までを詳しく取り上げる。
■実は混沌としていた米海軍一見、余裕があったように思われることもある米海軍だが、内情は苦しく混沌としていた。
また軍内部での人間関係も複雑怪奇で、軋轢も多かったことがわかる。
日本海軍と同じく、海戦の主力が戦艦から航空艦隊に移り変わる時代で、その綱引きも軍内部を複雑にしていた。
本書では、人事から見た航空艦隊の成長の歴史や、同じく急成長を遂げた海兵隊や、潜水艦部隊、インテリジェンス機関のリーダー、そして参謀職の人物も取り上げる。
■例――フランクリン・ルーズベルト大戦期の急成長を遂げた米海軍にとって、ルーズベルト一族の影響は極めて大きい。
とくにフランクリン・ルーズベルトは抜群の国民的人気を得る一方、複雑な性格で直言した人間をけして許さず、彼の意を汲んで動くリーヒやスタークなどを重用する一面もあった。
――アーネスト・キング部下のニミッツやハルゼーほど知られていないが、アーネスト・キングは制服組のトップとして合衆国艦隊を指導した人物。
人間的にはあくが強く、上からも下からも嫌われていたが、彼の能力に疑問をもつ者はいなかったとされる。
ドイツを優先する戦略に異を唱え、戦力を太平洋にも割くことを主張した。
彼がいなければ、日本の太平洋戦争は違ったものになったかもしれまない。
――ロバート・ゴームリー平時では優秀とされたが、食料や武器の補給もままならず、負傷者ばかりでまともに戦えない状況では、前に進めない者たちもいた。
混沌としていたガダルカナルでは、消極的と判断されて更迭された。
――レイモンド・スプルーアンス兵学校の成績や普段の仕事ぶりは地味で平凡だったが、混沌とした戦時には力を発揮した。
与えられた任務をこなして出世し、ニミッツの下で第五艦隊を率いた。
■著者略歴谷光 太郎(たにみつ・たろう) 1941年香川県に生まれる。
1963年東北大学法学部卒業、三菱電機株式会社入社。
1994年同社退社、山口大学経済学部教授。
2004年、大阪成蹊大学現代経営情報学部教授。
2011年同校退職。
著書に、『海軍戦略家キングと太平洋戦争』『海軍戦略家 マハン』(共に中央公論新社)、『敗北の理由』(ダイヤモンド社)、『青色発光ダイオードは誰のものか』(日刊工業新聞社)、『ロジスティクスから見た「失敗の本質」』『日本陸海軍はなぜロジスティクスを軽視したのか』(小社)、訳書に『統合軍参謀マニュアル』(白桃書房)など多数。
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