郊外の記憶
戦後の郊外住宅地の開発は、そこにあった地域生活を大きく変容させ、平板で奥行きがない空間を作り出してきた。
一方で、近年では郊外や街の何げない場所に過去の痕跡を探り、その土地の固有性に光を当てる「街歩き」や「聖地巡礼」が注目されてもいる。
では、郊外という均質な空間に眠る固有性は、どうすれば掘り起こすことができるのだろうか。
多和田葉子や三浦しをん、北村薫が東京の郊外を舞台に描く小説を読み、その街を実際に訪れ、ありふれた風景のなかを1人でゆっくり歩く。
そしてあらためて小説を読み、また街を歩く――。
この実践を繰り返すことで、場所・時間・物語の交差点に浮かび上がる「土地の記憶」に光を当てる。
東京の縁を読むことと歩くことを通して、郊外に眠る戦争の残痕や失われた伝統、開発の記憶、人々の生活史をよみがえらせ、「均質な郊外」に別のリアリティーや可能性を浮上させる。
社会学者が立川、国立、国分寺、調布、町田、春日部などの街を歩き、小説を読みながら、その街の成り立ちと歴史を考察する文学散歩。
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