ダイビングのエスノグラフィー 沖縄の観光開発と自然保護
青い空、白い砂浜、古き良きシマンチュたちによる暖かなコミュニティー。
沖縄の慶良間海域は、世界中のダイバーにとって一生に一度は行きたい「楽園」であり、2014年には31番目の国立公園に認定された。
しかしその背後では、島の住民「シマンチュ」による本土からの移住者である「ナイチャー」の排除や過疎化、海水温上昇やオニヒトデの食害によるサンゴ礁の減少など、問題が山積している。
そして、それらの問題が交錯する地点に、スクーバ・ダイビングという営みがある。
座間味村の海に魅せられてダイビングショップの出店に乗り出すナイチャーに対して、よそ者を排除して既得権益を守りたいシマンチュ。
国内に国立公園を増やして自らの手柄にしたい環境省。
彼らが出会うことで、次第に環境保全という言葉はよそ者を排除するために利用されるようになる。
一方で、「ダイビングで飯が食えたらいい」と個人的な動機で移住してきたナイチャーは本土の文化を持ち込み、島民と結婚して家族を作り、意図せず旧来の島の文化を変容させていく。
いまや過疎化が進む島の年中行事にはナイチャーの協力が欠かせない。
自らが沖縄に住むダイバーであり座間味村の海に取り憑かれた著者が、スクーバ・ダイビングをめぐるフィールドワークを積み重ねて、沖縄と本土の間の複雑な経済・文化的諸関係の様相を浮き彫りにし、その本質に迫る。
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