人間は自分たちだけで文明への階梯を上がって来たのではない。<br />一万五〇〇〇年前、東南アジアいずれかの川辺での犬との共生。<br />ニッチを見出す途上にあったお互いの視線の重なりが、弱点を補完し合い、交流を促し、文明と心の誕生を準備した。<br />オオカミは人間を振り返らないが、犬は振り返る。<br />人間は幻想や感情で判断するが、犬は論理的に判断する。<br />犬は人の言葉を理解し、人の心を読み、人の窮地を救う――人間と犬、運命共同体としての関係の特異性と起源を探る。<br />