彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われる――。<br />気骨ある男たちを主人公に、数多くの経済小説、歴史小説を生みだしてきた作家が、最後に書き綴っていたのは、亡き妻とのふかい絆の記録だった。<br />終戦から間もない若き日の出会い、大学講師をしながら作家を志す夫とそれを見守る妻がともに家庭を築く日々、そして病いによる別れ……。<br />没後に発見された感動、感涙の手記。<br />(解説・児玉清)